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地震に備えて(3)/ホームメイト
ここでは地震に関する各地域、市区町村や国の対策についてご紹介します。
あなたの住んでいる地域は大丈夫ですか?

「天災は忘れた頃にやってくる」と言われていますので、油断はできません。「備えあれば憂いなし」ということで、それぞれのご家庭で日頃から万全の地震対策をしておくことが大切です。
予想される大地震の被害

歴史的な大地震といえば、1923年(大正12年)9月1日に14万人の死者・行方不明者を出した関東大震災がありますが、私たちの記憶に新しいのは、1995年(平成7年)1月17日発生した阪神・淡路大震災です。
- 阪神・淡路大震災の甚大な被害
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阪神・淡路大震災は、観測史上最高の震度7の烈震が神戸市・宝塚市を中心に淡路島の一部まで襲い、地震発生と同時に倒壊した建物や家屋で道路が塞がれたり、火災が各地で発生しました。また、道路交通が寸断され、避難する車両や人々で大渋滞となったり、水道管が各地で破壊されたため、消火栓が使えなくなるなど、消火・救助活動に大きな支障をきたしました。
【主な被害状況】
- ■死者
- 6,433人
- ■建物全壊・焼失
- 全壊家屋10万4,906棟
半壊家屋14万4,274棟
全・半焼家屋6,217棟 - ■ライフライン
- 停電:約260万世帯(地震直後)
ガス停止:約85万世帯
水道:120万世帯以上断水
電話:約30万回線不通 - ■避難者
- 最大約35万人(被災直後)
- ■その他被害
- 阪神高速道路の橋脚が600メートル以上にわたって横倒し(液状化現象により)
- ■復旧作業期間
- 電気の応急送電完了:約1週間
ガスの復旧:約3ヵ月間
- 大地震とは
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地震は震源地でのエネルギーをマグニチュードで表わし、揺れの度合いを震度で表わします。大地震はおおむねマグニチュード7以上になりますが、揺れは震度階級で、震源地に近いほど大きくなります。
- 【震度6弱】
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- 人間が立っていることが困難になる。
- 耐震性の低い木造住宅では倒壊するものがある。
- 耐震性の高い住宅でも、壁や柱が破損するものがある。
- 【震度6強】
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- 人間は立っていることができず、這わないと動くことができない。
- 耐震性の低い木造住宅では、倒壊するものが多い。
- 耐震性の高い住宅でも、壁や柱がかなり破損するものがある。
- 【震度7】
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- 人間は揺れに翻弄され、自分の思い通りに動けなくなる。
- 木造住宅では、耐震性の高い住宅でも傾いたり、大きく破損するものがある。
- 【気象庁の従来の目安】
- 気象庁の説明では、震度5を強震、震度6を烈震と言い、震度6は家屋の倒壊が30%以下で、山崩れや地割れが生じ、多くの人々は立っていられない状況。震度7の激震は、家屋の倒壊が30%以上におよぶ最も激しい地震を言います。
- 予想される4大地震
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政府の中央防災会議では、発生が切迫している巨大地震として、「首都直下地震」「東海地震」「南海地震」「東南海地震」を想定しています。
【首都直下地震】
政府の中央防災会議が平成17年2月25日に公表した被害想定では、東京直下でマグニチュード7.3の大地震が冬の午後6時、関東大震災と同じ風速15mの状況で起きた場合、阪神・淡路大震災を大幅に上回る被害で、死者は最悪の場合、同震災の倍以上となる想定です。
- ■死者
- 約1万3,000人(交通被害も含む)
- ■建物全壊・焼失
- 最大約85万棟
- ■経済被害
- 最大約112兆円
- ■ライフライン
- 停電:約160万棟(地震直後)
ガス停止:約120万棟
水道:断水により約1,100万人に影響 - ■避難者
- 最大約700万人
【東海地震】
予想される大地震のなかでも、最も起きる可能性が高いと言われており、30年以内に地震が発生する確率は84%と言われています。政府の中央防災会議の予測では、駿河湾沖を震源地として、マグニチュード8.0の規模で、午前5時に発生した場合、静岡・愛知・三重県を中心に多大な被害が想定されています。
- ■死者
- 7,900~最大1万人(津波での死者400~1,400人)
- ■建物全壊
- 23万~46万棟(津波での被害は7,000棟)
- ■経済被害
- 37兆円
- ■避難者
- 1週間後には約190万人の住民が避難所で生活
【南海地震】
30年以内に地震が発生する確率は40%と言われています。 マグニチュード8.4前後の規模で午前5時に発生した場合、以下のような被害が想定されています。
- ■死者
- 6,500~1万1,000人(津波での死者2,600~7,100人)
- ■建物全壊
- 13万7,800~14万5,900棟(津波での被害は3万5,800棟)
【東南海地震】
30年以内に地震が発生する確率は50%と言われています。 マグニチュード8.1前後の規模で午前5時に発生した場合、以下のような被害が想定されています。
- ■死者
- 5,300~6,500人(津波での死者500~1,500人)
- ■建物全壊
- 18万3,400~20万1,800棟(津波での被害は6,800棟)
- 同時発生の恐さ
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駿河湾から四国の足摺岬沖まで伸びる南海トラフ周辺で、過去100~150年間隔で「南海」「東南海」「東海」大地震が繰り返し起きています。これらの地震が同時、または連続発生する場合は、被害がさらに拡大するとみられます。海溝型地震は巨大化しやすく、津波の被害が怖いのです。
【2大地震が同時発生した場合】
1605年、1707年には東海地震・南海地震が同時発生して、それぞれ死傷者が数千人~数万人に達したそうです。現在において、東南海・南海地震が同時発生した場合、以下のような被害が想定されています。
- ■死者
- 2万人以上
- ■建物全壊
- 60万棟以上
- ■経済被害
- 約56兆円
- ■避難者
- 1週間後には約440万人が避難所で生活
【3大地震が同時発生した場合】
東南海・南海地震が同時に起きると、高知県の沿岸には5分~30分後に最大で約12メートルの津波が襲うと想定されています。現在において、東海・東南海・南海の3大地震が同時発生した場合、以下のような被害が想定されています。
- ■死者
- 約2万5,000人
- ■建物全壊
- 約90万棟
- ■経済被害
- 81兆円
遅れている住宅の地震対策

阪神・淡路大震災では、犠牲者の8割強が建物の倒壊による頭部の損傷や内臓の損傷・窒息、家具や家電品の下敷きによる圧死・窒息死が死因だったそうです。言い替えれば、地震にもろかった旧建築基準法が被害を拡大した訳です。
- 古い木造住宅ほど多かった犠牲者
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1981年(昭和56年)に住宅や建築物に対する耐震基準が強化されましたが、死者はそれ以前に建てられた古い木造住宅に住んでいた人が94.2%と圧倒的に多く、古い住宅ほど犠牲者が多かったそうです。一方1981年以降の新耐震基準に沿って建てられた住宅での犠牲者は、わずか1.8%に過ぎなかったのです。
築年数で言うと、築10年以内の住宅の倒壊率は1割弱でしたが、築20年を超えると5割に増え、さらに築50年では7割に達しました。(国土交通省 調べ)
- 旧建築基準法での木造住宅が危険
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国の防災白書では、今ある4,684万戸の住宅のうち、約2,100万戸は、住宅や建築物に対する耐震性の基準が改正された1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋だと指摘しています。その2,100万戸のうち、約57%の1,200万戸はとくに耐震力不足が指摘され、耐震補強工事をしなければ危険な家屋と見られています。
都市防災の専門家は「古い家は大地震で傾いても仕方がないが、倒れないように補強すべき。それで救われる命は多い」と指摘しています。
市区町村による耐震診断

1995年(平成7年)末に施行されたのが「建築物の耐震改修の促進に関する法律」です。国や地方自治体が無料の耐震診断を行ない、耐震補強の必要があると診断した家屋には補助金を出したり、低利の住宅金融支援機構融資が受けられるようになりました。
- 耐震診断の重要性
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政府の中央防災会議の専門調査会によれば、旧耐震基準による家屋や建物を、1981年(昭和56年)にできた現在の耐震基準と同じ程度に強化した場合、東海地震の予想される災害が減少します。想定される全壊が約17万棟から約6万棟に減少し、建物の倒壊などによる死者は約6,700人から約1,700人に減ると見ています。
- 木造在来工法の75%が耐震性に不安
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全国の工務店などで組織する「日本木造住宅耐震補強事業者協同組合」(通称:木耐協)が2004年(平成16年)8月にまとめた耐震診断結果によると、全国の木造在来工法の家屋の4軒に3軒が耐震性に不安があると指摘しています。
【木耐協による耐震診断調査結果】
- ■期間
- 3年間(2004年6月まで)
- ■対象
- 木造在来工法の家屋 約4万5,000戸
- ■診断結果
- 51%の家屋が、「大地震が来れば倒壊または大破壊の危険」であり、23.5%が、「やや危険」。
- 市区町村に申込んで耐震診断
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家屋や建物の耐震性強化対策は、緊急で重要なものとなり、多くの市区町村で1981年(昭和56年)5月31日以前に着工された木造住宅について、耐震診断を無料で実施しています(岐阜県では有料で約1万円)。
【診断の進め方】
平家または2階建の延べ床面積300m²以下の木造住宅(在来工法に限る)の耐震診断を市区町村に申込むと、後日耐震診断員が派遣されてきます。
- 耐震診断員は営業活動禁止
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愛知県の場合で言えば、県が開催した耐震診断技術などに関する講習会を受講した建築士のみが「耐震診断員」として登録され、診断に訪れるときは「登録証」を携帯することが義務付けられています。
診断時に、リフォーム工事の売り込みをすることは禁じられています。また、自分から申込まない限り、診断員が直接訪問して耐震診断をすることはありません。
- 診断結果を報告書で説明
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申込みを受けてそのお宅へ訪問した診断員は、その家の耐震性をチェックします。壁や床、天井をはがして調査することはありません。ただし、床下や天井裏が見られるところがあれば、見やすいように片付けておいて下さい。
現地診断をした診断員は、各項目について数値評価して判定し、診断結果をまとめて再び訪問し、報告書で説明します。
【診断項目】
- ①壁はバランスよく配置されているか
- ②壁の量は多いか
- ③建物の形が平面的あるいは立体的に見て、整形か不整形か
- ④筋交いは十分に入っているか
- ⑤地盤や基礎の状況はどうなっているのか
- ⑥建物がどの程度、老朽化しているか
【診断結果】
耐震診断の結果は、評点数により4段階に分かれます。
- ■0.7未満
- 倒壊または大破壊の危険性が高い
- ■0.7以上1.0未満
- やや危険
- ■1.0以上1.5未満
- 一応安全
- ■1.5以上
- 安全
- 工事費の一部を市区町村で補助
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耐震診断の結果、評点0.7未満の「倒壊または大破壊の危険性が高い」と判定された住宅を、評点1.0以上の「一応安全」レベルまで耐震補強する工事費の一部を、市区町村で補助しています。
【対象外の住宅】
木造住宅でもツー・バイ・フォー工法、プレハブ工法、丸太組工法は対象になりません。
【上限60万円まで耐震工事費補助】
実際に耐震補強工事を行なう場合、対象工事額が90万円を超える工事は、県と市区町村を合わせて上限60万円まで補助され、対象工事額が90万円未満の工事は、その3分の2が補助額になります。
なお、耐震改修工事がかなりかかる場合は、住宅金融支援機構の「耐震リフォーム融資」を受けることもできます。
大地震に危険な住宅密集地

阪神・淡路大震災において、木造家屋が密集する神戸市長田区などでは、多数の家屋倒壊や、同時多発的に火災が発生、家屋に挟まれ逃げ遅れた多くの人たちが犠牲になりました。
そこで2001年(平成13年)8月に、国土交通省は、大都市での直下型地震の危険性を重視し、全国の住宅密集地の約1万棟の建物や家屋の実体を調査しました。全国の住宅密集地にある1万棟の家屋は、震度6ないし7程度の烈震で倒壊する危険のある家屋は、全体の66%にのぼりました。
- 耐震改修には消極的
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住宅密集地の住民に「大地震対策の改修をする意向があるかどうか」を聞いたところ、9割以上が「改修はしない」という回答でした。
【耐震改修しない理由】
- ■必要ない
- 老朽化した家屋を、今さら改修しても仕方がないから
- ■改修費の負担が大きい
- 大地震に耐えるような改修をしたくても、お金がないから
「地震対策の改修に補助金が出るならどうか」と聞いたところ、1万棟のうち22%が「改修したい」と答えたそうです。
- 国土交通省が耐震改修に本腰
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阪神・淡路大震災の苦い教訓をもとに、国が2002年度(平成14年)から住宅密集地での耐震改修に補助金を出す制度をスタートさせました。
住宅密集地1万棟の実態調査に基づき、今後東京・大阪・名古屋の三大都市圏を中心に、10年間で延べ10万棟の耐震改修を目指し、平成14年度予算に耐震改修に対する補助金を計上して、耐震改修に本腰を入れ始めました。
また、大地震で家屋や建物が倒壊することによる道路交通のマヒを重視し、被災地の道路の通過障害率を30%以下に抑え、避難や消火・救助活動をスムーズに行なえるように方針で決めました。